目次

  1. ユネスコ無形文化遺産にも登録される日本の和紙
  2. 和紙と洋紙
  3. 和紙の原料【みつまた、楮、雁皮】
  4. みつまたで作られた和紙の特徴
  5. みつまたを使用した製紙の歴史

ユネスコ無形文化遺産にも登録される日本の和紙

和紙が植物から作られていることを知っている人は多いはず。ですが、みつまたが和紙の原料として古くから使用されていることを知っていますか?

和紙と洋紙

まず初めに和紙と洋紙の原料の違いについて学びましょう。

和紙は、植物の幹ではなく樹皮の繊維を利用するのが特徴です。
洋紙の原料として使われているのは木材パルプ。これは、樹皮ではなく様々な樹木の幹を砕いたもので、洋紙は材料を溶かし、固めて作られています。

和紙の原料【みつまた、楮、雁皮】

和紙の主な原料は3つ、「みつまた(三椏)」、「楮(こうぞ)」、「雁皮(がんぴ)」です。どの原料も、共通した特徴があります。

  • 繊維が長く強靭
  • 繊維に粘り気があり、絡みやすい
  • 繊維がたくさん採取できる
  • 仕上がりに光沢が出る
  • 仕上がった紙が使いやすい

それぞれ原料となる植物によって、できあがる和紙の風合いが異なってくるのも和紙の面白いポイントです。

みつまた

  • ジンチョウゲ科 落葉低木
  • 使用用途:日本紙幣、証券用紙、箔合紙、賞状用紙、おみくじなど
  • 主な生産地:岡山県、高知県、徳島県、島根県
  • 和紙の色味:薄オレンジ色。漂白剤を加え白くなった改良半紙も
  • 和紙の特徴:光沢があり滑らか

枝が三つに分かれることから命名されたみつまた。

他の紙に比べても、滑らかな紙質で印刷に向いていることから、古くより日本紙幣に使用されています。機械漉きの和紙に原料として使用されることがほとんどで、手すき和紙の原料としてはあまり使用されていません。

  • クワ科 落葉低木
  • 使用用途:半紙(書道用紙)、障子紙、傘紙、版画用紙、提灯紙など
  • 主な生産地:高知県、茨城県
  • 和紙の色味: 少し黄味がかっている
  • 和紙の特徴:厚手で表面はゴワゴワしている

栽培がしやすく、繊維も取り出しやすいことから、古くから和紙の原料として使われている楮(こうぞ)。繊維が太くて長いのが特徴です。日本で最も生産量が多く、現代でも幅広い用途に使われています。

雁皮

  • ジンチョウゲ科 落葉低木
  • 使用用途:日本画用紙、箔打ち紙、ふすま紙、版画用紙
  • 主な生産地:徳島県北地山(讃岐山)
  • 和紙の色味:赤っぽいクリーム色
  • 和紙の特徴:表面がつるつるしている

奈良時代(今から約1300年前)ごろから粘り気が強いことを利用し、コウゾに混ぜて使われはじめました。

生育が遅く、人工的に栽培することが難しいため、山野に自生する天然物を利用しなければいけません。そのため、良質ではない部分を取り除いたりと、処理に時間がかかることと、生産量が少ないことから値が張ります。

墨がにじみにくく裏移りもしにくいため、記録用の用紙として多く使われています。

ねり


和紙を漉くためには、原料繊維を均一に分散させることが必要です。

上手に処理されている原料でも、水の中に入れて撹拌しただけでは均一に繊維は分散できません。
洋紙に使用する繊維の短いパルプでもこの作業は難しく、みつまた、楮、雁皮などの長い繊維は、繊維同士が絡み合い、もっと困難な作業になります。それに加え、植物の繊維は水の約1.5倍ぐらいの比重があり、水の中で作業を行うと、すぐに沈んでしまいます。

ここで、“ねり”を活用し、水中で繊維の分散を助けています。

和紙に重要な“ねり”に一般的に使用されているのはトロロアオイという植物。そのほかにもアオギリの根、ノリウツギの皮なども使用されます。

その他和紙に使用される植物

  • 麻(あさ)
  • イネ

書道用紙には木材パルプ、わらなどを用いています。古紙をリサイクルすることも多いです。

最近では、価格の安さから、タイやフィリピン、マニラなど海外からの輸入原料も増えてきました。基本的には植物であれば、なんでも紙にはできると言われています。

みつまたで作られた和紙の特徴

丈夫

何人もの人の手に渡り、ポケットに無造作に入れたりしてもぐしゃぐしゃにならず、世界一の品質と言われている日本紙幣。
実は、日本紙幣はみつまたが原料になっています。

みつまたの長く強い繊維が絡みあい、この破れにくくしなやかな紙幣を作っています。日本紙幣に使用されているみつまたは、ネパール産のみつまたが多いですが、一定量の日本国産のみつまたを大蔵省印刷局が保管しています。

虫害を受けづらい

みつまたの皮には、防虫効果もある毒素が含まれていることから、動物もその皮をかじらないと言われています。そのため、日本紙幣には防虫効果があり、何年たっても虫害を受けづらくなっています。

みつまたを使用した製紙の歴史

紙原料としてみつまたを使用し始めたのは、今から400~500年も以前からであるといわれています。
計画的に生産されるようになったのは、今から200年前の静岡県富士宮市の白糸の滝近くで栽培されたのが最初と記録されているそうです。

一般的に重要な製紙原料となったのは、1876年(明治9年)に、政府印刷局でみつまたを原料として紙幣が作られてから。
日本の紙幣は明治時代からの、伝統を受け継ぎ作成されていることが分かります。

まとめ

一口に和紙と言えど、風合いも種類も様々。和紙の風合いの違いは、材料が大きく関係しています。
世界に誇れる丁寧な日本の手仕事の代表とも呼べる”和紙”の良さや違いを正しく知って、生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?